人体模型はいかが? 

08.1.24店内10

引越しシーズンがやってきた。当リサイクルショップは地方大都市に隣接する郊外にある。マンション・アパートも多い。商圏内に大学も二つある。三月は人も物も動く。
処分したいものも千差万別、時にえっ、と驚くものも現れる。

そこは変哲もない2階建てのアパートだった。20代後半と思われる女性が依頼主だ。部屋に入ると、引越しの準備にものがごった返していた。パイプベッドやカジュアルな応接椅子のセット、自転車マシン、ぶら下がり健康器具、カラーボックスなどがあった。ちょっと珍しいものとしては医療用ベッドが二つ。

 「これはどうしたんですか」
 「実は、ここでカイロプラクティックの診療所をやっていたのです」
 「なるほど、で、やめちゃうんですか」
 「結婚することになって・・・・東京へ引っ越すんです」

そう言えば医療用ベッドがないか、という問い合わせがあったことを思い出した。案外売れるかもしれない。
おおかた引き取って欲しいものの説明をうけて、査定を終ろうとしていた時だ。

 「あの、こんなものは要りませんか」

彼女がベッドの陰から引っ張り出してきたのは、なんと背骨の模型だった。金属の支柱にぶら下がった背骨はほぼ実寸大、赤っぽい神経なんかも張り付けてあってなかなかリアルである。少々気持ちが悪い。

 「値段はつきませんが・・・・・引き取るだけなら持って帰りますよ」
 「ぜひ、そうしてください。助かります」

この仕事をやめ引越しをするのだから、邪魔者あつかいである。まあ、売れる可能性はすくないけれど、店の片隅に置いておけば面白がる客もいる。人体神経図など、もっと気持ちの悪いパネル3枚ももらってきた。

10日ほどたったある日、若い女性が「あれはいくらですか」と値段を聞いたのが、その背骨の模型だった。
当店では、ほとんどの商品にプライスシールをつける。または手書きのポップがつけてある。さすがに売れると思っていなかっただけに、それにはプライスシールはつけていなかった。

 「う〜ん、いくらにしよう・・・・・5千円でどうですか」
その女性は、少し嬉しそうな顔をして、
 「4千円にしてもらえませんか」
願ってもない申し出といえる。二つ返事で、いいですよ、と答える。なんせ、仕入れはただである。

それよりも、どうしてこんな物がいるのか、尋ねた。
 「東洋医学のほうの整体の勉強をしているんです。カイロとはちょっと違うんですよ」
彼女は、背骨の模型を指差しながら、
 「この模型は、正確にいうと部位が一対省略されています。でも、なんとか使えます」
 「へええ、そんなものですか」

世の中、やっぱり広い。背骨の模型が、こんなに早く売れてしまうなんて。
ところがそれだけで終わらなかった。翌日のことだ。中年の男がやってきた。そしてこう言った。

 「ちょっと探し物をしているんですが・・・」
 「どんなものですか?」
 「人体模型なんか、ありませんか?」

めったにないことが不思議と重なるのである。
これを私は「重なる法則」と呼んでいる。


なるほどなと思えたら、それぞれひと押しお願いします。

コメント

レントゲン写真

大腿骨頸部骨折画像とチタン螺子治療画像を整形外科の主治医にプリントしてもらってきたから見てよ妻に言われましたが、気の小さな私は恐ろしくてとても見られませんでした。小学生の頃、人体模型は本物だと思っていましたね。

コメントありがとうございます。

小学校の理科室には人体模型やらまむしのホルマリン漬け(これはほんとうにあったかな)やら、子供とって不気味に思えるものがいろいろありましたね。まあ、大人になっても気持ち悪い不思議な物体です。数年前にすごく精巧にできた人体展というのが話題になってましたね。「人体模型」とはだいぶイメージが違うようです。

何年か前に人体の不思議展というを展示会を見て、そこにある人体標本のすべてが、過去を生きていた人間そのものという現物を目の当たりにした時、ちょっとたじろぐ感覚を覚えたのをおもいだしました。
ところが、先日007シリーズのカジノロワイヤルをDVDレンタルで見ていたら、先の人体標本が映画の中のワンシーンに挿入されていて、カクテルドレスで酒を飲む場所のオブジェとして配置されているのを見ると、欧米人の感覚はわからん、カリギュラの時代から何も変わっていないのと思ってしまったのでした。

コメントありがとうございます。

「人体の不思議展」というの、見たかったなあ。「カジノロワイヤル」にその人体標本が出ていたとは知りませんでした。映画見てみます。しかし、それをバックに酒を飲むとは、さすが狩猟民族(?)農耕民族の日本人がめでる酒の背景は、桜、月、清流。やはり人体標本を見ながら酒は飲みたくないですね(笑)

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